千葉県立四街道高等学校
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2018/12/26

校長室だより【12月】「働き者と怠け者」

Tweet ThisSend to Facebook | by teacher01
「働き者と怠け者」
                  平成30年12月25日 校長 外山 信司
 すっかり寒くなったので、校庭でも「アリ」を見ることがなくなりました。アリとは春から秋にかけてぞろぞろ列を作って食べ物を一生懸命巣に運んでいる、黒い小さな昆虫のことです。
 『イソップ童話』に「アリとキリギリス」という、有名な話があります。アリは一生懸命働きますが、キリギリスは働かずに遊んでいる「怠け者」です。「働きアリ」という言葉があるように、アリは「働き者」の代名詞とされています。
 ところが、アリにも「怠け者」がいるらしいのです。ハチやアリは人間と同じように集団、社会といってもよいのですが、集団で生きています。その集団の中から「働き者」だけを取り出すと、どうなるでしょうか。
 全員が「働き者」なので働きまくるはずですが、その中から新たに「怠け者」が出てくるというのです。反対に「怠け者」だけを取り出すと、どうなるでしょうか。全員が「怠け者」なので怠けまくるはずですが、「怠け者」が働くようになるというのです。
 「へえ~」と思った人も多いでしょうが、実は、これは1980年代、今から40年ほど前に広まったもので、科学的な根拠がまったくなく、証明されていない、「都市伝説」のような話だったのです。
 そこで、この話が本当かどうか確かめてやろうと考えた昆虫学者がいました。北海道大学農学研究院准教授の 長谷川 英祐(えいすけ)先生です。長谷川先生は、野外で捕まえた女王アリ1匹と働きアリ150匹の集団を8つ作り、働きアリ1匹ずつにマーカーで色を付けて区別し、動きを観察しました。
 次に、「働き者」を選び出して「働き者」だけの集団を作り、一方で「怠け者」だけを選び出して「怠け者」の集団を作りました。そしてそれぞれの集団の観察を続けました。その結果、「働き者」の中から「怠け者」が出現し、「怠け者」の中から「働き者」が出現することが確かめられたのです。つまり「都市伝説」が成り立つことが証明されたのです。しかも、「働きアリ」の2割、20%が実は「怠け者」であることがわかったのです(『働かないアリに意義がある』メディアファクトリー新書)。
 この長谷川先生の研究を聞いて、どう思うでしょうか。「こんな研究をしてヒマだなあ…」と思った人も多いのではないでしょうか。しかし実際は正反対で、長谷川先生たちは1日7時間から8時間に及ぶ観察を2か月以上続け、あまりの過酷さに血尿まで出るほどの過労に陥ったそうです。
 私は、この研究を知って、「本当かどうか確かめてやろう」、また「根拠があるか確かめてやろう」という、すさまじい知的好奇心と、それを本当にやってしまうという粘り強さ、実行力に深く感動しました。学問に対する情熱というか、学者魂をひしひしと感じました。
 先日の新聞に、イギリスのリンダ・グラットンさんが来日したという大きな記事が出ていました。以前も取り上げましたが、彼女は「人生100年時代」を迎え、現在の小学校5・6年生の50%が100歳以上生きるということを明らかにして衝撃を与えた人です。グラットンさんはインタビューの中で、子どもや若者に対して「何をやりたくないかを主張するだけでなく、何をやりたいかを説明できるといい。」と言っていました(12月19日『朝日』)。
 若い人は、何かにつけて「やりたくない」という思いが先に出ることが多いと思います。実行する前に「無駄だ」と思うことも多いでしょう。しかし、このようなネガティブでマイナスの発想ではなく、アリの研究に挑んだ長谷川先生のように「何をやりたい」という、ポジティブかつプラスの発想で、新学期を送ってほしいと切に願っています。
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