文字
背景
行間
四高日誌
2018年5月の記事一覧
校長室だより【5月】「辺境生物」
「辺境生物」
平成30年5月15日 校長 外山 信司
「新緑の候」という5月の時候のあいさつのとおり木々の青葉が目に鮮やかです。本校の校章の由来となったエノキをはじめ、クスノキ、ヒマラヤスギなどの大木に囲まれた環境で日々を送っていると、人間も自然の一部であることが実感されます。
しかし、人間は「地球上で一番偉い」とか「地球の支配者である」と思っている人も多くいます。私達は、人間こそ進化における「最終勝利者」だと思い込んでいます。
このような「常識」を木っ端みじんに打ち砕いてくれる本が、長沼毅氏の『辺境生物はすごい! 人生で大切なことは、すべて彼らから教わった』(幻冬舎新書)です。長沼氏は「科学界のインディー・ジョーンズ」と呼ばれ、南極や北極、深海、砂漠など、人間から見たら「過酷な環境」、つまり「辺境」で生きる生物を研究している「辺境生物学者」です。北極から帰った翌日に富士山に登るというように、まさにインディー・ジョーンズ顔負けの冒険野郎でもあります。
しかし、長沼氏に言わせれば、「辺境を知ることは、生命の限界を知ること」で、「生命の強さや神秘を知ること」に他ならないのです。そして「辺境生物が、生きる意味を教えてくれた」というのです。第一章に登場するチューブワームという謎の深海生物についての記述を読めば、長沼氏の言いたいことはすぐにわかるでしょう。
チューブワームは海底火山の周辺にある熱水噴出孔に生息しています。白い筒(チューブ)の先に赤い花のような物が付いた形をしており、口も消化管も肛門もないので、動物なのにエサを食べません。太陽の光が届かない深海にいるので、植物のように光合成もできません。では、エサも食べず、光合成もしないのにどうやって栄養を得ているのか?
チューブワームは、体内にイオウ酸化細菌を共生させています。この細菌は、海底火山から噴出する火山ガス(硫化水素)を燃やしてエネルギーを取り出し、それを光の代わりに使って、二酸化炭素から自分とチューブワームのための栄養を作り出しているのです。つまり、細菌に「暗黒の光合成」をさせることで生きているのです。
このようなチューブワームは奇妙で特殊な生物と思われていましたが、深海の火山周辺のどこにでもいることがわかってきました。地球全体では陸より海の方が圧倒的に広く、深海の面積も相当に上るので、チューブワームは「地球全体から見れば、少しも珍しくない「ふつう」の生き物」だったのです。
しかもエサや養分の少ない環境では、「ライフサイクルの遅い生き物のほうが生き残りやすい」のです。南極の海底には1,500年以上生きる海綿動物がいたり、チューブワームには250年以上生きるものがあって、究極なスローライフを送っています。長沼氏は「自然界は「弱肉強食「早い者勝ち」ばかりではない。自分のペースでゆっくり生きることが「ふつう」な世界もある」と書いています。
人間も生物のひとつである以上、「生きる」ということの本質からは逃れられません。生物学という看板を掲げていますが、人生に思いを馳せる興味深い本です。生きることの意味について悩んでいる人にぜひお勧めします。きっと気が楽になるはずです。
平成30年5月15日 校長 外山 信司
「新緑の候」という5月の時候のあいさつのとおり木々の青葉が目に鮮やかです。本校の校章の由来となったエノキをはじめ、クスノキ、ヒマラヤスギなどの大木に囲まれた環境で日々を送っていると、人間も自然の一部であることが実感されます。
しかし、人間は「地球上で一番偉い」とか「地球の支配者である」と思っている人も多くいます。私達は、人間こそ進化における「最終勝利者」だと思い込んでいます。
このような「常識」を木っ端みじんに打ち砕いてくれる本が、長沼毅氏の『辺境生物はすごい! 人生で大切なことは、すべて彼らから教わった』(幻冬舎新書)です。長沼氏は「科学界のインディー・ジョーンズ」と呼ばれ、南極や北極、深海、砂漠など、人間から見たら「過酷な環境」、つまり「辺境」で生きる生物を研究している「辺境生物学者」です。北極から帰った翌日に富士山に登るというように、まさにインディー・ジョーンズ顔負けの冒険野郎でもあります。
しかし、長沼氏に言わせれば、「辺境を知ることは、生命の限界を知ること」で、「生命の強さや神秘を知ること」に他ならないのです。そして「辺境生物が、生きる意味を教えてくれた」というのです。第一章に登場するチューブワームという謎の深海生物についての記述を読めば、長沼氏の言いたいことはすぐにわかるでしょう。
チューブワームは海底火山の周辺にある熱水噴出孔に生息しています。白い筒(チューブ)の先に赤い花のような物が付いた形をしており、口も消化管も肛門もないので、動物なのにエサを食べません。太陽の光が届かない深海にいるので、植物のように光合成もできません。では、エサも食べず、光合成もしないのにどうやって栄養を得ているのか?
チューブワームは、体内にイオウ酸化細菌を共生させています。この細菌は、海底火山から噴出する火山ガス(硫化水素)を燃やしてエネルギーを取り出し、それを光の代わりに使って、二酸化炭素から自分とチューブワームのための栄養を作り出しているのです。つまり、細菌に「暗黒の光合成」をさせることで生きているのです。
このようなチューブワームは奇妙で特殊な生物と思われていましたが、深海の火山周辺のどこにでもいることがわかってきました。地球全体では陸より海の方が圧倒的に広く、深海の面積も相当に上るので、チューブワームは「地球全体から見れば、少しも珍しくない「ふつう」の生き物」だったのです。
しかもエサや養分の少ない環境では、「ライフサイクルの遅い生き物のほうが生き残りやすい」のです。南極の海底には1,500年以上生きる海綿動物がいたり、チューブワームには250年以上生きるものがあって、究極なスローライフを送っています。長沼氏は「自然界は「弱肉強食「早い者勝ち」ばかりではない。自分のペースでゆっくり生きることが「ふつう」な世界もある」と書いています。
人間も生物のひとつである以上、「生きる」ということの本質からは逃れられません。生物学という看板を掲げていますが、人生に思いを馳せる興味深い本です。生きることの意味について悩んでいる人にぜひお勧めします。きっと気が楽になるはずです。
モバイルアクセス
https://cms2.chiba-c.ed.jp/yotsukaido-h/15ad0a053f3226c7948d79f654dc69ec
携帯から緊急連絡・行事予定が確認できます。
外部リンク
お問合わせ
千葉県四街道市鹿渡809-2
TEL 043-422-6215
FAX 043-424-4104
✉ yotsukaido-h@chiba-c.ed.jp
アクセスカウンタ
5
2
3
8
8
3
2