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嫩草
本校夜間部卒業文集「嫩草」寄稿文を掲載させていただきます。
- 灯り -
戦後間もない混乱の時代、この国には、昼間は働き、夜になって学び舎に足を運ぶ多くの勤労青年がいました。彼らは、家族を支えるために働きながら、それでもなお「学び」を諦めず、「いつか必ず、自分の未来を切り拓きたい」という強い願いを胸に教室の灯りを頼りに集いました。定時制高校夜間部は、まさにそのような若者たちを受けとめるために誕生し、長い年月をかけて独自の歴史と伝統を築いてきました。
第七十号を迎える卒業文集『嫩草』の刊行、たいへん喜ばしく思います。「嫩草」という題名には、若葉が芽吹くように、皆さん一人ひとりの新しい成長と旅立ちを祝福する思いが込められていると聞いています。その長い歴史の節目に、三部制定時制高校として新しい歩みを進める本校の姿を重ねると、深い感慨を覚えます。
本校の夜間部が受け継いできたのは、単なる制度としての「夜間教育」ではありません。そこには、困難の中でも学ぶことを諦めない人々の姿があり、仲間同士が励ましあい、支えあう「学びの共同体」としての価値があります。教室の灯りは、希望そのものを象徴してきました。皆さんが学んできた教室を照らすその光は、戦後の夜空の下で灯り続けた小さな明かりと同じく、誰かの未来を照らすものであり続けています。
時代は移り変わり、現代に生きる皆さんの置かれた状況は、当時の勤労青年とは大きく異なります。家庭環境、仕事との両立、学び直しの機会、心身の不調からの再出発……その背景は実に多様です。しかし「自らの力で未来を拓きたい」という思いは、どの時代の生徒も同じです。三部制定時制高校となった本校は、その思いを受けとめるために柔軟な教育環境を整え、生徒一人ひとりの歩みに寄り添う学校であり続けたい、そう思っています。
皆さんがここまでたどり着いた背景には、一人ひとりがご先祖様から受け継いだ「生命」という、何より尊く、かけがえのないものがあります。私たちが生きていること自体、幾千もの偶然と奇跡が重なって生まれた「有限にして唯一の生命」です。この生命に誇りを持ち、同時に他者の生命の重さを理解し、敬意を払える人であってほしいと願っています。
自分の成長を喜びながら、同時に周囲の人の努力と存在に感謝できる心。つまずいた仲間に手を差し伸べ、誰かの痛みに気づける優しさ。それらは、教室での学習と同じくらい、夜間部で学ぶ皆さんが手にした大切な力であり、これからの人生を支える財産です。
私たちは、与えられた時間を思いどおりに生きられるわけではありません。しかし、限りある時間の中でどの道を選ぶか、どのように歩もうとするかは、常に私たち自身に委ねられています。皆さんは「夜に学ぶ」という大きな選択をし、自分の人生の手綱をしっかり握って今日まで歩んできました。この事実そのものが、皆さんの誇りであり、誰にも奪えない価値です。
急速に変化する現代社会において、私たちが未来へつなぐべき使命は明確です。
自分の生命を大切にし、他者の生命を尊び、その思いを次の世代へ継承していくこと。
どれほど時代が様変わりしようとも、人と人とが支え合い、敬意をもって関わり合う姿勢こそが、社会をより良くし、未来を照らす灯りとなります。
夜の校舎でともに学んだ日々は、皆さんの人生に刻まれる大切な財産です。その経験は必ず、これからの挑戦を支える力となります。どうか自分を信じて、一歩一歩、確かに前へ進んでください。
卒業おめでとう。皆さんの未来が、新しい若葉が伸びゆくように、しなやかで力強く広がっていくことを心から願っています。
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