先日、創立120周年記念講演会でお話をいただいた鈴木おさむ氏が、講演の様子を朝日新聞出版のニュース・情報サイト「AERA dot.」に掲載していましたので、下記のとおり本文を紹介します。

【掲載記事】
「Xのアルバムをみて、可能性はゼロじゃないと」鈴木おさむが母校の高校で熱く講演
1970年生まれの団ジュニたちへ
放送作家・鈴木おさむさんが、今を生きる同世代の方々におくる連載『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は、夢の種について。
先日、自分の母校であります千葉県立安房高校というところで講演をさせていただきました。創立120周年ということで。
千葉県の館山市というところにありまして、「千葉だから東京に近いじゃん!」と思う方もいるかもしれませんが、僕が高校の頃にはまだアクアラインもありませんでした。
車で東京に出ようとすると3時間半から4時間。電車も特急でまるまる2時間かかる。
都会まで近そうで遠い。僕の住む街には高校になるまでレンタルビデオもなく映画館もない。だけど、ラジオもぎりぎり東京の電波が入る。
テレビやラジオから届くものは東京と同じなのに、行くには遠い。だから余計に憧れる。
安房高校は田舎では進学校と言われておりました。僕は高校の頃にはうっすらと、放送作家というものに興味を持っていました。テレビやラジオを作る仕事に就いてみたいと。
だけど、田舎で夢を見るってなかなか勇気がいる。僕は思うのですが、夢を堂々と応援してくれる友達ってそんなに多くないんじゃないかと思うんです。
例えば、田舎に住む中学生の女の子が「私、あいみょんみたいになりたいんだ」と言ったとして「本当にがんばってよ!」と心から言える友達ってどのくらいいるんでしょうか?
堂々と夢を見る人って、周りからしたら怖い。そういい切れる人に憧れたりもします。だからその夢をバカにしたり笑ったりする人がいる。自分の夢をバカにされるのが怖くて友達には言えなかったりする。
僕も高校の頃に心の中に膨らんできた夢を人に言うのが怖かった。
ですが、僕が通っていた高校の先輩にX JAPANのYOSHIKIさん、TOSHIさんがいます。
正直、X JAPAN(当時はX)って、最初は「元気が出るテレビ」に出演していて、バラエティー色が強かったんです。そうするとね、田舎に住む人はちょっとバカにしたりするんですよ。
だけどね、気づくとどんどん売れていった。そして僕が高校2年の時です。
友達が2年5組の教室に持ってきた1枚のアルバム。Xの発売されたばかりのアルバムが当時のオリコンLPチャートで1位を取ったのです。
教室の窓から見えるのは田舎の景色です。
でも、田舎のその教室から夢を見て周りに何を言われようが突き進んで、勝ちあがっていった先輩がいる。
そのアルバムを見て、自分の中の血液の流れが早くなっていったのがわかりました。
だから可能性は0じゃないと。
そこから自分が思ったことを口にするようにしました。バカにされようと、口にすることで自分の意志を固める。
安房高校の講演で、喋っている間につい熱くなってしまいました。あの時、YOSHIKIさんとTOSHIさんが夢の標識を見せてくれたように、目の前の生徒たちの中で、夢を見ているけど、自分で諦めようとしてる人がいるなら、絶対にその種を捨てないでほしいと。
僕は思うんです。「自分の夢を笑うような人は友達じゃない」と。それを強く言いました。
講演が終わり、インスタのDMに安房高の生徒たちからDMが届きました。熱い思い。夢を諦めようとしたけどがんばりますと書いてる人もいた。
Wikipediaを開いてX JAPANを調べると、「LIVE」のところに、1982年と83年のところに「千葉県立安房高等学校文化祭LIVE」と書いてあります。
僕が講演をしたその体育館で、高校時代のXは文化祭でLIVEをした。夢の種です。
余談ですが、今年、とある仕事をTOSHIさんに頼みました。TOSHIさんは、「後輩から頼まれたら行くでしょ」とスケジュールを無理くり空けてノーギャラで来てくれました。
何歳になっても夢を見られることが才能。
後輩たちよ、僕も49歳ですが、もうちょっとだけ夢見て頑張るぞ。
安房高魂!
AERA dot.(電子版) 2021/12/09 16:00より